親の介護費用はいくらかかる?平均費用と介護破産を防ぐための事前の備え

  • 執筆
    續 恵美子(ファイナンシャルプランナー(CFP®、ファイナンシャル・プランニング技能士))

長寿化社会の進行とともに介護を要する人が増え、自分ごととして捉えることが必要となってきている介護の問題。親の介護をどうするかを考えたときに、多くの場合は費用面での不安がまず頭をよぎるのではないでしょうか。親の介護をサポートしながらもいつかは自分(および配偶者)も介護を受ける側になるかもしれず、そのためのお金を準備しておく必要もあります。本記事で、介護費用の平均額や相場、公的制度を紹介しますので、早めの準備と対策で介護破産を防ぎましょう。

介護費用がいくらかかるかは個々の状況によって異なる

生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかる費用合計額の平均は以下のとおりです。

・二人以上世帯:約542万円(一時費用47万円+月額費用9万円×平均介護期間55ヵ月)

・単身世帯:約441.29万円(一時費用115万円+月額費用6.7万円×平均介護期間48.7ヵ月)

出所:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査

一時費用とは住宅改造や介護用ベッドの購入など、介護を要するにあたり一時的に必要となった費用です。月額費用は、介護サービスの利用料(公的介護保険の自己負担額を含む)のほか、介護に関して月々支払う費用です。

単身世帯の一時費用が二人以上世帯の2倍以上となっているのを見ると、住宅の構造上、改造を要した部分が多くあった、介護用品を多く購入する必要があった、などの理由も推測されます。そもそも、介護でかかる費用は要介護者の状態や介護期間、介護を行う場所(在宅・施設)など、さまざまな状況で変動します。そこで、以下より、さまざまな条件別に介護費用の平均額を見ていきましょう。

要介護(支援)度別

まずは、要支援・要介護度別に介護に関する一時費用と月額費用の平均額をまとめました。

一時費用はばらつきがありますが、月額費用は要介護度が上がるほど高くなる傾向がうかがえます。

二人以上世帯 一時費用 二人以上世帯 月額費用 単身世帯 一時費用 単身世帯 月額費用
要支援1 44万円 5.8万円 23万円 1.9万円
要支援2 44万円 7.0万円 294万円 4.7万円
要介護1 30万円 5.4万円 241万円 4.7万円
要介護2 54万円 7.5万円 164万円 6.6万円
要介護3 42万円 8.5万円 58万円 7.1万円
要介護4 52万円 12.4万円 86万円 8.9万円
要介護5 47万円 11.3万円 73万円 12.2万円

出所:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに筆者作表

なお、各要支援・要介護度の状態の目安は以下のとおりです。

状態の目安
要支援1 日常生活はほとんどできるが、一部に見守りや手助けが必要
要支援2 日常生活の一部に見守りや手助けが必要だが、適切な介護予防サービスの利用により状態維持・改善の見込みあり
要介護1 日常生活の一部に見守りや手助けが必要
要介護2 軽度の介護(食事・排泄・入浴・薬の内服などの手助け)が必要
要介護3 中等度の介護(食事・排泄・入浴・衣服の着脱などの介助)が必要
要介護4 重度の介護(食事・排泄・入浴・衣服の着脱などに全面的な介助)が必要
要介護5 最重度の介護(全面的な介助)が必要

出所:生命保険文化センター「公的介護保険で受けられるサービスの内容は?」をもとに筆者作表

介護を行った場所別

介護を行う場所は、「在宅」と「施設」に大別されます。ここでは、それぞれの月額費用の平均額を見てみましょう。

二人以上世帯 単身世帯
在宅 5.2万円 3.7万円
施設 13.8万円 12.5万円

出所:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに筆者作表

親や自分の自宅で行う在宅介護に比べ、老人ホームなどの施設に入居する施設介護の月額費用は2~3倍程度高いことがわかります。ただし、施設の種類や利用する部屋(個室・相部屋など)、サービスの内容をはじめ、さまざまな条件で費用に差が生じるため、施設介護を検討する場合には事前によく確認しておくことが大切です。

公的介護保険を使わない場合

ここまで紹介した介護費用の平均額は、公的介護保険を利用した場合の自己負担額も含まれた金額です。しかし、さまざまな事情から公的介護保険を利用しない可能性もあります。そこで、公的介護保険を利用しない場合の介護費用平均額も見ておきましょう。

二人以上世帯 単身世帯
一時費用 68万円 92万円
月額費用 4.0万円 4.4万円

出所:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに筆者作表

公的介護保険を利用するためには、居住地の市区町村に申請をして要支援・要介護認定を受け、ケアプランを作成してもらう必要があります。要支援・要介護認定の申請をしてから、認定されるまでには一定期間を要するため、それまでに何らかの支出が必要になれば全額自分で負担しなくてはなりません。そのほかにも、以下のような場合も考えられます。

  • 要支援・要介護認定に至らなかった
  • ケアプランに基づかない介護サービスを受けたい
  • 希望するサービスが地域で提供されておらず利用できない、など。

親の介護費用は親と子のどちらが負担する?

個人差があるとはいえ高額になりがちな介護費用を誰が負担するのか気になる人も多いかもしれません。基本的には、介護を受ける人、つまり要介護者が親である場合は親自身の貯蓄や年金から賄うものと考えられます。

一方で、ある調査(※)によると、働く約6割の人(子)は親に介護が必要になった場合に何らかの費用をサポートしています。例えば、「介護サービスの利用料」「施設・病院の利用料」「介護用品の購入」「介護にかかる交通費」「生活費」など、サポートする費用の種類は多岐にわたります。

(※)厚生労働省委託調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング実施)「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果」

介護破綻となる可能性もーサポートしすぎに要注意

子どもが親の介護費用を負担することを否定するわけではないですが、サポートのしすぎには注意が必要です。サポートの仕方は人それぞれですが、親の介護を機に、ゆくゆく家計が破産状態に陥ってしまうことは避ける必要があります。一般的に、介護費用として月々数万円の負担を伴うことになると、子世帯家計の収支バランスが大きく崩れてしまいます。家計に負担がかかるだけでなく、自分の老後資金や将来の自身の介護費用の準備に支障をきたしてしまう可能性もあります。結果的に、自分の子や孫世代に負担をかけてしまうことも考えられます。

親の介護費用サポートが必要となる理由

介護破産を防ぐ対策を考える前に、まずはどのような場合に子が親の介護費用を負担することになるのか、主な理由を知っておきましょう。

親の資産でまかなえない(資金不足)

親自身の貯蓄や年金などで介護費用を負担できないという状態であれば、収入のある子がサポートするということもあり得ます。親を想う気持ちはもちろん、子どもには親に対する扶養義務があるためです。

ただし、子から親への扶養義務は「自身の経済的な余裕の範囲」とされるため、自分の家計を犠牲にしてまでの扶養義務を負うことはありません

親の預貯金を引き出せない

親自身に介護費用をまかなえるだけの資産があっても、引き出し等の手続きができないために子どもが立替えるケースも考えられます。預貯金等の引き出しや解約は、基本的に口座名義人本人でなければ手続きできないためです。

介護は突然始まることもあり、例えば脳血管疾患や転倒などといった病気やケガで急に要介護状態になると、本人が金融機関に出向けない、委任状を取りにくいという場合もあるでしょう。また、認知症と診断された場合、原則として親名義の預貯金が凍結されてしまうため、結果的に子どもが負担することになる場合もあります。

介護に関するお金まわりの情報共有ができていない

預貯金や民間の介護保険、有価証券などの有無や、口座(契約)がある金融機関など、介護に関するお金まわりの情報共有が家族間でできていないために、とりあえず子どもが負担するといったケースもあるようです。いざ介護に直面すると、子どもとしては放っておけないものでしょう。特に身近にいる子どもの負担が大きくなる可能性があります。

介護破産を防ぐための事前の対策

介護破産を防ぐために、まずは親子・兄弟姉妹の家族みんなで介護が必要になった場合の話し合いや情報共有をしておくことが大切です。それによって、さまざまな対策を立てやすくなります。

どんな介護を受けたいか意識を共有

介護が必要になったときに、どのような介護を受けたいのか、親の考え方や希望を聞き、意識を共有しておくことが大切です。

家族と一緒に過ごしながら在宅で介護を受けたいという希望であれば、子どもも今のうちから住宅改造が必要な場所や費用を意識しやすくなります。老人ホームなどの施設入居が希望であれば、親子で施設のサービスや入居条件などをチェックしながら費用の確認もできます。

親のお金の準備状況を共有

在宅・施設介護のどちらでも、親の希望を聞くことで、親の介護費用の準備状況の話につなげやすくなります。

銀行や証券会社、民間の介護保険など、口座(契約)のある金融機関名や、残高、契約内容等を確認してリストアップしておきましょう。

また、年金受給状況や月々の収支を確認し、情報共有をしておきましょう。生活費など日常のお金管理の面でも大切です。

公的制度について調べておく

利用できる公的制度についても調べておきましょう。介護費用の負担軽減につながります。

高額介護サービス費(自己負担上限額)

高額介護サービス費は、介護保険サービスを利用した際の自己負担額の1ヵ月間の合計額が上限金額を超えた場合に、超えた金額を払い戻してくれる制度です。自己負担上限額は、所得に応じて世帯あたり(一部は個人あたり)15,000円~140,100円までです。

高額介護サービス費を受けるためには自治体へ申請する必要があります。ただし、介護保険の給付対象外の利用者負担分や福祉用具の購入費、施設サービスの食費・居住費など、上限額対象外のものもあるため注意しましょう。

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険を合わせた1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の自己負担金額が、年間の上限金額を超えた場合に、超えた金額を払い戻してくれる制度です。上限金額は、年齢および所得に応じて19万円~212万円までです。

払戻しを受けるためには医療保険の保険者(国民健康保険の場合は市区町村)に申請する必要があります。

その他制度

その他、以下のような制度もあります。利用対象となるにはいくつか条件がありますが、利用できる場合は検討してみるといいでしょう。

  • 介護保険負担限度額認定制度
  • 生活福祉資金貸付制度
  • 自治体独自の制度

会社の介護支援制度を調べておく

会社の介護支援制度も確認しておきましょう。従業員が仕事と介護を両立するための職場づくりは多くの会社にとって重要性を増しており、さまざまな支援制度を設ける会社が増えてきています。例えば、休暇取得や就労時間の調整、テレワーク、介護費用の助成など、勤務先にどのような制度があるか知っておくことで、誰が、どのように親の介護を担うかを家族間で調整しやすくなります。会社の支援制度をうまく活用することで介護離職を避けることもできるでしょう。

親の介護対策と同時進行で自分の介護費用も備えよう

親の介護費用対策をすることは、将来の自分の介護への備えにもつながるはずです。自分の子どもに介護費用のことで負担をかけないように、自分の介護に向けて自分で費用準備を始めていきましょう。介護費用準備に向く方法を3つ紹介します。

民間の介護保険

民間保険会社の介護保険は、保険会社の定める所定の要介護状態になった場合や、一定の要介護認定を受けた場合に、一時金や年金を受け取れます。受け取れる金額や期間、受け取り方など、あらかじめ契約で定めるため、費用準備をしやすいメリットがあります。

NISA

NISAは一生涯利用できる制度であり、いつ来るかわからない介護に対応しやすい点でおすすめです。年間最大360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)まで非課税で投資ができ、NISA口座内の資産はいつでも引き出し(売却)が可能であるため、まとまった一時費用が必要になっても調達しやすいメリットもあります。また、1,800万円(成長投資枠は1,200万円)の非課税保有限度額は再利用ができるため、もしも親の介護費用サポートのために一部売却しても、また自分用に投資することも可能です。

iDeCo

iDeCoは原則60歳まで資金の引き出しができませんが、掛金や運用益に対する税制メリット(※)を享受しながら60歳以降のための資金づくりをしやすい点でおすすめです。将来の受け取り額は運用成果によって変動しますが、公的年金の補填としてiDeCoで運用した資産を自分の老後生活費や介護費用にあてることができます。自分の子どもの負担軽減にも役立つでしょう。

※具体的な税制メリットは、以下になります

  • 掛金が全額所得控除
  • 運用益が非課税
  • 受取時にも控除制度あり

まとめ

介護でかかる費用額は要介護者の状態や介護期間、介護を行う場所など、さまざまな状況で変動します。一時費用・月額費用ともに負担が大きくなる可能性もあり、親の資産や年金だけで負担できない場合は子どもに負担がかかる可能性もあります。経済的に可能な範囲を超えてサポートをする必要はないですが、親子共に安心できる介護生活を迎えるためには、早いうちから準備に取り組むことも大切です。今から親子で介護に対する希望やお金のことを話し合い、対策を練っていきましょう。その際、「親の介護」と「自身の介護」を切り離して考えず、自分のための資産づくりや保全に努めることが大切です。

執筆者

續 恵美子

ファイナンシャルプランナー(CFP®、ファイナンシャル・プランニング技能士)

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。渡仏後は2年間の自己投資期間を取り、地元の大学(Université de Toulon)で経営学修士号を取得。地元企業で約7年半の会社員生活を送ったあと、フリーランスとして念願のファイナンシャルプランナーに。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネーやビジネス記事の執筆・監修・家計相談などで活動中。

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