生前贈与を「活きたお金」にする方法|子の無駄遣いを防ぎ、資産運用で将来に備えるコツ

2026年7月29日

  • 執筆
    柴田 充輝(FP1級、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士)

「子や孫に贈与したお金を、将来のために有効活用してほしい」と考える親世代は少なくありません。せっかくの生前贈与も、渡し方を誤れば短期間で消えてしまう恐れがあります。

贈与は、お金を「渡す」だけでなく「運用して育てる」発想を持ちましょう。本記事では、子の浪費を防ぐ工夫や非課税制度の活用術、暦年贈与・相続時精算課税など主要制度の使い分けなどを解説します。

そもそも生前贈与とは

生前贈与とは、財産を持つ方が存命中に、自分の財産を他者へ譲り渡す契約行為を指します。贈与は「あげます」「もらいます」という双方の合意で成立する諾成契約で、贈与者の一方的な意思だけでは契約として認められない仕組みです。

亡くなった後に財産が移る「相続」と異なり、渡す相手・タイミング・金額を生前に自分の意思で決められる点が特徴です。

なお、口約束でも法律上は有効なものの、税務調査で贈与の事実を証明するには書面の証拠が欠かせません。後々のトラブルを避けるためにも、贈与契約書は必ず作成しましょう。

生前贈与したお金は無駄遣いで終わる可能性がある

せっかくの生前贈与も、受け取った子や孫が使い道を誤れば、大切な資産が短期間で消えてしまう恐れがあります。原因の多くは、急に大きな金額を手にしたときに起きる金銭感覚の麻痺や、金融リテラシー(お金に関する知識・判断力)の不足です。

代表的な失敗例は、高級車やブランド品など高額な浪費です。さらに、運用初心者を狙った投資詐欺や、ハイリスク商品への一点集中で資産を大きく減らすケースもあり得ます。教育・住宅・老後など、本来の贈与目的が叶わずに終わるパターンも珍しくありません。

大切な資産を次世代へ引き継ぐ以上、効果的に活用してほしいものです。そのため、「渡して終わり」ではなく、運用や使途設計とセットで贈与を考える視点が欠かせません。

生前贈与で渡したお金を運用に回すメリット

生前贈与は「渡す」だけで完結するわけではありません。受け取ったお金を運用に回せば、消費による減少を防ぎつつ、長期的な資産形成にもつなげられます。

ここでは、贈与資金を運用する3つの代表的なメリットを順番に確認していきましょう。

計画的な利用で贈与資産が長持ちする

贈与資金を運用に回すメリットは、資産の寿命を伸ばせる点にあります。理由の一つは、運用によって得られる利息や配当、値上がり益が元本に上乗せされ、時間の経過とともに資産そのものが増えていくことです。

また、運用中の資産には「引き出すまでの一手間」が生じるため、すぐ手元で使える現金に比べて衝動的な消費の抑制につながります

たとえば投資信託で受け取った場合、解約・売却の判断と入金までの数営業日を経ないと現金化できません。この物理的・心理的なクッションが衝動的な消費を防ぐ一助となるでしょう。

結果として、贈与資金が教育・住宅・老後など、本来の用途に向けて温存しやすくなります。必要な時に必要な分だけ活用することで、浪費を防ぐだけでなく、子や孫の世代まで価値をつなぐことが可能となるかもしれません。

複利効果を活かして増やせる

運用に回せば、複利の力で効率よく資産を増やせる可能性があります。長期かつ再投資率が高いほど、理論上は複利効果のメリットを十分に享受できます

例として、1,000万円を年利4%で20年間運用したケースを試算してみましょう。複利で運用すると約2,191万円になりますが、単利では1,800万円にとどまり、約391万円もの差が生まれます。
※将来の運用成果を保証するものではありません

次世代が活用できる資産を増やすうえで、複利効果を活かした運用は大切な視点です。

インフレから資産を守れる

運用は、インフレによる実質価値の目減りから贈与資産を守る役割も担います。現金のまま保有すると、物価上昇分だけ購買力が減っていくためです。

実際に、総務省の調査によると、2025年平均で3.1%の物価上昇が起こりました(生鮮食品を除く総合指数)。仮に年2%のインフレが20年続けば、現金1,000万円の実質価値は約670万円まで目減りする計算です。

そこでインフレ対策の選択肢となるのが株式や投資信託ですが、これらには元本割れの可能性がある点に留意が必要です。一方で、長期で見ればインフレ率を上回るリターンが期待できるため、現金だけでなく、一部をリスク資産として贈与することも、購買力を守る有効な手段のひとつと言えるでしょう。

出典:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均 (2026年1月23日公表)」

生前贈与を検討している親世代が知るべきNISA活用術

贈与資金を運用する受け皿として、有力な選択肢がNISAです。年間最大360万円(成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)・生涯1,800万円までの投資で得た運用益が非課税になる制度で、自由に引き出せます。

長期運用と必要に応じて引き出せる柔軟性を踏まえると、贈与資金を運用する際に相性がよい制度です。

早く始めるほど複利効果が働く

NISAの運用益非課税というメリットを活かすには、早く運用を始めて複利効果のメリットを最大限に享受するのが合理的です。保有期間が伸びるほど、複利により資産効率が高まるためです。

通常の課税口座では運用益から約20%(20.315%)が差し引かれますが、NISAではその分も再投資に回すことができるため、複利効果が一段と強まります。つまり「時間」と「非課税」の二つの追い風を最大限に活用できるのが、早期に始める本質的な価値といえます。

子が教育資金を使う時期から逆算する

NISAで運用する際には、子や孫の教育費が必要になる時期から逆算して、資金計画を立てましょう。教育費は支出が発生する時期の見通しを立てやすいため、ゴール設定が比較的しやすい資金です

教育費支出のロードマップ

教育費支出のロードマップ

たとえば孫が0歳の時点で贈与し、大学進学の18歳まで運用するなら18年、中学受験の12歳までなら12年と、運用期間を明確に設計できます。さらに2027年から始まる「こどもNISA」を活用すれば、0〜17歳でも年間60万円・総額600万円までの非課税枠を親世代の枠とは別に確保できます。

「いつ使うか」から逆算すれば、必要な利回りや積立額が見えてきます。必要な時期が近づいてきたら、リスク資産の割合を抑えて、資産全体のリスクをコントロールしましょう。

子の浪費を防ぐ生前贈与のポイント

贈与は「渡し方」を工夫するだけで、浪費してしまうリスクを下げられます。ポイントは、子が自身で使途を意識しながら主体的に管理する仕組みづくりです。

目的別に口座を分ける

浪費の防止に効果的なのが、贈与の用途ごとに口座を分けて受け取る運用です。教育費・住宅資金・老後資金など目的別に口座を切り分けると、お金の使い道が可視化され、衝動的な引き出しを抑えやすくなるでしょう。

たとえば「教育資金口座」「住宅頭金口座」「長期運用口座」と用途を明示しておけば、本来の目的に沿った使い方を意識できるでしょう。生活費口座と完全に分離すれば、普段の生活で使われるリスクを回避できる可能性が高まります。

ただし、NISA口座を開設できるのは一人につき一つです。長期運用に回す資金を投資運用する際には、NISAを活用しての非課税運用に加え、課税口座(特定口座・一般口座)との組み合わせで用途別に管理する形になります。

資産の形で贈与する

現金ではなく投資信託や株式といった金融資産の形で贈与すると、消費を防げます。換金には売却・受渡・出金という複数のステップが必要となり、衝動的な支出までに「考える時間」が生まれるためです。

運用中の資産は値動きを伴うため、上昇局面では「今売るのはもったいない」、下落局面では「今売ると損が確定してしまう」という心理が働きやすく、衝動的な換金にブレーキがかかりやすくなります。もちろん下落時にパニック売りする可能性もゼロではありませんが、現金に比べれば「一度立ち止まって考える」機会が生まれる点はメリットです。

なお、贈与する有価証券は必ず子名義の証券口座に移管し、運用判断・売買指示も子自身が行う形にしましょう。親が代理で売買を続ければ、贈与の実態が否定されるリスクがあります。

親子で金融教育をする機会として認識させる

生前贈与は、子に金融教育を施すよいタイミングでもあります。運用・税金・リスク管理という実生活に直結するテーマを、リアルな自分事として学べるからです。実際に投資経験を通じて、経済感覚や金融リテラシーを自然に身につけられる点も副次的なメリットです。

たとえば、贈与資金を使ってNISA口座で投資信託を買うなら、子自身が商品選定・積立額設定・運用状況の確認を行います。親は判断材料を提供しつつ、最終決定は子に委ねる関わり方が理想です。

家族で運用を見守る

定期的に家族で運用状況を確認する場を設けると、計画的な資金の活用につながります。年に1〜2回、運用報告や方針を話し合うだけでも、「大切な資産を運用している」という自覚と投資の継続力が高まるでしょう。

ただし、あくまで運用の意思決定を下す主体は、受贈者である子です。親は質問対応やアドバイスに徹し、運用判断や口座操作は子に任せる距離感を意識しましょう。

生前贈与をするときに知っておくべき制度

生前贈与をする際には、代表的な3つの非課税制度を理解し、贈与の目的・金額・タイミングに合わせて使い分けましょう。

年110万円の基礎控除

暦年贈与では、受贈者1人につき年間110万円までの基礎控除があります。複数年にわたって計画的に贈与すれば、長期的に財産を非課税で移転できます。

たとえば、子2人と孫2人の合計4人に毎年110万円ずつ10年贈与すれば、4,400万円を税負担ゼロで移転できます。ただし2024年以降、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される「生前贈与加算」の対象期間が、3年から段階的に延長されました。

被相続人の相続開始日による加算対象期間の違い

被相続人の相続開始日による加算対象期間の違い

延長された4〜7年前の贈与については、合計100万円を控除した残額が加算対象となります。制度の改正により、これまで以上に早期かつ計画的な贈与を行う重要性が高まりました。

出典:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」

相続時精算課税制度

まとまった金額を一度に渡したい場合に検討できるのが、相続時精算課税制度です。60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できます。累計2,500万円まで非課税で贈与でき、超過分には一律20%が課されます。

制度改正により、2024年1月からは年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円分は申告不要かつ相続時の持ち戻し対象外で、暦年贈与の生前贈与加算とは無関係に毎年活用できます。

住宅取得や事業承継など大型の資金移転に向く一方、一度選択すると同じ贈与者からは暦年課税に戻れません。届出書の提出前に、暦年贈与と相続時精算課税制度を比較したシミュレーションを行いましょう。

出典:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

結婚・子育て資金の一括贈与

孫の結婚・出産・育児の資金援助には、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置が活用できます。18歳以上50歳未満の子・孫1人につき最大1,000万円(うち結婚費用は300万円が上限)まで、非課税で渡せる時限措置です。

現行制度において、2027年3月31日まで利用できます。金融機関での専用口座開設・領収書提出が必須で、使途も結婚・子育てに限定される点が特徴です。

出典:国税庁「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」

生前贈与をするときの留意点

生前贈与は正しく行わなければ、税務上「贈与が成立していない」と判断され、想定外の課税リスクを招きかねません。贈与に関して、よくある落とし穴は事前に押さえておきましょう。

名義預金のリスクがある

よくある失敗が「名義預金」です。名義預金とは、口座の名義人と、実際にお金を出している人(実質的な所有者)が異なる預金です。

たとえば、親が子に内緒で子名義の口座を作り、通帳・印鑑・キャッシュカードを親が保管しているケースです。この状態だと、相続発生時に贈与者の相続財産へ加算され、相続税の課税対象となる恐れがあります。

名義預金のリスクを避けるためには、受贈者本人が口座開設・印鑑管理・入出金判断まで一貫して担う体制が不可欠です。

出典:国税庁「被相続人以外の名義の財産(預貯金)」

未成年者がNISA口座を開設できるのは2027年以降

現行のNISAは18歳以上が対象で、未成年者は口座を開設できません。かつてのジュニアNISAも2023年末で新規受付を終了し、現状では子・孫世代の非課税運用には制度上の空白があります。

ただし、2025年12月に閣議決定された令和8年度税制改正大綱により、2027年1月から「こどもNISA」が始まります。0〜17歳でも年60万円・総額600万円までの非課税枠を利用できるようになり、教育資金準備の選択肢が広がるでしょう。

制度が始まるまでの間は、贈与者自身のNISA口座で運用したうえで、孫が成人した後に現金または有価証券として贈与するのが現実的な選択肢です。

出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」

贈与契約書を必ず作成する

民法上、贈与は口約束でも成立しますが、税務署に対して贈与の事実を証明するには書面の記録が欠かせません。贈与契約書を毎年の贈与ごとに作成し、贈与者・受贈者双方の自署と押印を残しましょう。

特に注意したいのが「定期贈与」と「連年贈与」の違いです。定期贈与とは「総額1,000万円を10年間で毎年100万円ずつ渡す」と最初から決まっている贈与です。この場合、契約初年度に「定期金に関する権利」を取得したものとみなされます。その評価額に対して一括で贈与税が課されるため、毎年の基礎控除を活かせません。

連年贈与であれば、各年110万円までは非課税です。ただし、金額・日付が機械的に同じだと定期贈与とみなされかねない点に注意が必要です。

出典:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

IFAと相談しながら生前贈与の資金計画を立てるメリット

IFAとは、特定の金融機関に所属せず、提携先と業務委託契約を結んで資産運用の助言を行う専門家です。会社の営業方針に縛られにくい立場から、提携先の商品ラインアップの範囲内で、贈与・運用・相続をまたいだ長期的な家族の資産計画を設計してもらえます。

三世代の資産を設計してもらえる

IFAの強みは、親・子・孫の三世代を俯瞰した資産プランを描ける点です。多くのIFAは複数の証券会社や運用会社と業務委託契約を結んでおり、家族構成や資産規模に応じた商品を幅広く検討できます。

たとえば「子世代は相続時精算課税でまとまった資産を移転し、孫世代はこどもNISA枠を活用」といった大きな方向性を一緒に検討できます。なお、具体的な税務上の判断や手続きについては、税理士に確認したうえで進めると安心です。

相場の急変時でも相談できる

IFAは長期で同じ顧客を担当する形態が多く、相場の急変時にも継続して相談できる存在です。

相場が急変動する場面では、「売るべきか、このまま待つか、あるいか買い増すべきか」という判断で迷うかもしれません。「〇〇ショック」のような大幅な下落が起こったとき、パニック状態になり、運用をやめてしまうケースが考えられます。

しかし、IFAは家族構成・教育費の必要時期・相続の見通しなどを踏まえて、助言してくれます。困ったときにいつでも相談できる専門家がいれば、大切な資産を守れる可能性が高まります。

まとめ

生前贈与をする際には、お金を「渡す」のではなく「育てる」発想が大切です。短期間でお金が浪費されてしまうリスクを避けるためにも、計画的な贈与が欠かせません。

NISAを活用して非課税で運用すれば、効率よく資産を増やしつつ、資産の寿命を延ばせます。「必要なときに、必要なお金を使ってもらえる」ため、贈与者の満足度も高まるでしょう。

世代を超えた運用をする際には、IFAへの相談もひとつの選択肢です。運用の成果を保証するものではありませんが、専門家の伴走を受けることで、贈与資金を有効活用する計画を立てやすくなります。なお、贈与の制度選択や税額計算など税務に関わる具体的な判断については、必ず税理士にご相談ください。

<留意事項>

本記事で紹介した運用成果はあくまで一定の利回りを仮定した試算であり、実際の運用成果を保証するものではありません。投資信託や株式等の運用商品へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等およびリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、金融機関等ホームページの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示または契約締結前交付書面等をご確認ください。

<NISAのご注意事項>

配当金等は口座開設をした金融機関等経由で交付されないものは非課税となりません。NISA口座で国内上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。

同一年において1人1口座(1金融機関)しか開設できません。

NISAで購入できる商品は各金融機関が指定する商品に限られます。

年間投資枠と非課税保有限度額が設定されます。

損失は税務上ないものとされます。

出国により非居住者に該当する場合、原則としてNISA口座で上場株式等の管理を行うことはできません。

つみたて投資枠では積立による定期・継続的な買付しかできません。

※ その他、NISA に関するご注意事項、並びに2023年までの一般NISA ・つみたてNISA等に関するご注意事項の詳細は金融機関等のホームページ等にてご確認ください。

執筆者

柴田 充輝

FP1級、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士など。

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