持ち家と賃貸、老後はどっちが安心?住宅リフォーム費用や住み替えの資金計画

  • 執筆
    辻本 剛士(神戸・辻本FP合同会社 代表)

住宅価格の高騰が続くなか「持ち家にするべきか、それとも賃貸のままでよいのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。どちらが有利かを判断するためには、コストや将来の支出を踏まえて決めることが重要です。

安易に選択してしまうと、後になって負担の大きさに気づき、後悔につながる可能性があります。

そこでこの記事では、持ち家と賃貸のコストを比較し、生涯コストのシミュレーションを見ていきます。あわせて、持ち家と賃貸のメリット・デメリットや、どのような人に向いているかについても解説するため、住まい選びに迷っている方はぜひ参考にしてください。

【持ち家・賃貸】老後はどっちが経済的に安心か

持ち家と賃貸は、これまで多くのメディアでも取り上げられてきたテーマであり、住まい選びにおいて頻繁に比較される論点の一つです。どちらが有利かという議論は続いていますが、実際のところは一概に結論づけることはできません

なぜなら、ライフスタイルや居住期間によって結果が大きく変わるためです。例えば、長期間同じ住まいに住み続ける場合と、ライフステージに応じて住み替えを行う場合では、コストの考え方が異なります。

さらに、持ち家であればリフォーム費や固定資産税、賃貸であれば家賃や管理費といったように、前提となる条件によってもコストに差が生じます。このように、持ち家と賃貸のどちらが経済的に安心かは、個々の状況を踏まえて判断する必要があるでしょう。

持ち家・賃貸のコスト比較

前述のとおり、持ち家と賃貸では発生するコストが異なります。初期費用や毎月の支出に加え、将来発生する費用も含めて整理することが重要です。ここでは、それぞれのコストを項目ごとに比較していきます。

初期コストの比較

持ち家と賃貸では、入居時に必要となる初期費用の内容や負担額に、以下のような違いがあります。

項目 持ち家 賃貸
主な費用 頭金、登記費用、仲介手数料、各種税金など 敷金、礼金、仲介手数料、引っ越し費用など
負担の大きさ 高め(物件価格の3〜10%程度) 低め(家賃の4~5倍程度)
特徴 まとまった資金が必要 初期費用を抑えやすい

持ち家は頭金や諸費用などの初期負担が大きく、購入時にはまとまった資金が必要となります。おおむね物件価格の3〜10%程度が初期費用の目安です。例えば、3,000万円の物件を購入した場合には、90万円〜300万円程度の初期費用が必要となるでしょう。

一方で、賃貸は敷金や礼金などの費用がかかるものの、家賃の4~5倍程度と初期負担は比較的軽く、資金面でのハードルは低いといえます。

住宅ローン・家賃負担の比較

持ち家と賃貸では、長期的な住居費の考え方にも違いがあります。

持ち家の場合、住宅ローンの返済が続く期間は一定の負担がありますが、ローン完済後は住居費を抑えやすくなります。一方の賃貸は、住宅ローンのように支払いが終わることはなく、生涯にわたり家賃が発生します。

例えば、毎月10万円の返済で35年ローンを組んだとしましょう。一方で賃貸の家賃も同じく10万円とすると、35年後には持ち家であれば住宅ローンの返済がなくなり、住居費の負担は大幅に軽減されます。対して、賃貸の場合はその後も毎月10万円の家賃が継続して発生します。

このように、老後の期間が長くなるほど住居費の差は広がりやすく、総支出にも影響が出てくるでしょう。

なお、住宅ローンが完済しても固定資産税や管理費などは継続して発生するため、その点も踏まえて考える必要があります。

リフォームコストの比較

リフォーム費についても把握しておく必要があります。

持ち家の場合、建物の維持や劣化に応じて定期的にリフォーム費が発生します。特に、以下のような箇所は一定の周期でまとまった費用が必要となるでしょう。

リフォーム箇所 費用の目安
外壁・屋根 80〜200万円
キッチン・浴室・トイレなどの水回り 50〜150万円
給湯器や設備機器 20〜40万円
床やクロスなどの内装 20〜100万円

また、老後に向けて間取り変更や全面改修を行う場合、フルリフォームが必要になるケースもあります。その際の費用の目安は以下のとおりです。

種類 費用の目安
戸建てのフルリフォーム 500万〜2,000万円
マンションのフルリフォーム 300万〜1,500万円

これらのリフォームは築年数の経過とともに重なりやすく、老後のタイミングで費用負担が大きくなる可能性があります。一方、賃貸の場合は基本的にオーナーが修繕費を負担するため、入居者に大きな費用は発生しません。

生涯コストのシミュレーション

持ち家と賃貸のどちらが経済的に有利になるかは、前提条件によって結果が異なります。ここでは、以下の条件を前提に、生涯コストの違いをシミュレーションしていきます。

【シミュレーションの前提条件】

  • 想定寿命:90歳
  • 購入年齢:35歳
  • 居住期間:55年間(35歳〜90歳)

これらの条件をもとに、持ち家と賃貸それぞれでどのようなケースが有利になりやすいのかを見ていきましょう。

持ち家が有利になるケース

ここでは持ち家が有利となるケースを想定し、以下の条件でシミュレーションしていきます。

持ち家の条件(戸建て)

  • 物件価格:5,000万円
  • 住宅ローン:金利1%
  • 返済期間35年
  • 毎月の返済額:約14万1,000円
  • ローン完済年齢:70歳
  • 初期費用:400万円(物件価格の8%)
  • 固定資産税:年間10万円
  • リフォーム費用:800万円

賃貸の条件(マンション)

  • 家賃・管理費:14万1,000円(ローン返済額と同額)
  • 初期費用:約60万円(敷金・礼金・引っ越し等)

持ち家と賃貸の生涯コストは以下のようになります。

【持ち家の生涯コスト】

項目 金額
住宅ローン総返済額 約5,930万円
初期費用 400万円
固定資産税 550万円
リフォーム費用 800万円
合計 約7,680万円

出典:住宅保証機構株式会社 返済額の試算

【賃貸の生涯コスト】

項目 金額
家賃総額 約9,300万円
初期費用 約60万円
合計 約9,360万円

今回のケースでは、約1,680万円の差で持ち家が有利な結果となりました。

この主な要因は、住宅ローン完済後の住居費の違いです。持ち家の場合、70歳でローンを完済した後は、固定資産税やリフォーム費はかかるものの、毎月の大きな支出は抑えやすくなります。一方で、賃貸は90歳まで家賃の支払いが継続するため、長期間になるほど総支払額が大きくなります。

賃貸が有利になるケース

続いては条件を変更し、賃貸が有利となるケースをシミュレーションします。条件は以下のとおりです。

持ち家の条件(戸建て)

  • 物件価格:5,000万円
  • 住宅ローン:金利1.0%
  • 返済期間:35年
  • 毎月の返済額:約14万1,000円
  • ローン完済年齢:70歳
  • 初期費用:400万円(物件価格の8%)
  • 固定資産税:年間10万円
  • リフォーム費用:1,100万円

賃貸の条件(マンション)

  • 家賃:14万1,000円
  • 初期費用:約60万円
  • 65歳以降の家賃:6万円

今回の条件では、持ち家と賃貸の生涯コストは以下のようになります。

【持ち家の生涯コスト】

項目 金額
住宅ローン総返済額 約5,930万円
初期費用 400万円
固定資産税 550万円
リフォーム費用 1,100万円
合計 約7,980万円

【賃貸の生涯コスト】

項目 金額
家賃総額(35歳〜65歳) 約5,080万円(14万1,000円×12ヵ月×30年)
家賃総額(65歳〜90歳) 約1,800万円(6万円×12ヵ月×25年)
初期費用 約60万円
合計 約6,940万円

今回のケースでは、約1,040万円の差で賃貸のほうが有利な結果となりました。

主な要因として、老後に家賃の低い物件へ住み替えた点が挙げられます。65歳以降の住居費は14万1,000円から6万円へと下がり、月々で約8万円程度抑えることができました。

本シミュレーションでは65歳時点で住み替えを行っていますが、より早い段階で住み替えを行うことで、住居費をさらに抑えることが可能です。

持ち家を選択するメリット・デメリット

ここでは、持ち家を選択する場合の主なメリット・デメリットについて見ていきます。

持ち家のメリット

持ち家を選択した場合の主なメリットは以下のとおりです。

  • ローンを完済すれば老後の住居費を軽減できる
  • 自由にリフォームができる
  • リースバックの活用で資金調達ができる

まず、住宅ローンを完済すれば毎月のローン負担がなくなるため、老後の生活費を抑えやすくなります。固定資産税やリフォーム費などは発生するものの、家賃のような継続的な支出がなくなる点は大きなメリットといえるでしょう。

また、持ち家であれば間取りの変更や設備の入れ替えなどを自由に行うことができます。ライフスタイルや家族構成の変化に応じて住空間を調整できるため、長く快適に暮らしやすい点も特徴です。

さらに、持ち家であればリースバックの活用も選択肢に入ります。リースバックとは、自宅を売却して資金を得ながら、そのまま同じ家に住み続けられる仕組みです。リースバックを利用すれば、まとまった資金を確保しつつ、住み慣れた環境を維持することも可能です。

持ち家のデメリット

一方で、持ち家には以下のようなデメリットが存在します。

  • 高齢になると住宅ローンが組みにくい
  • メンテナンス費用がかかる
  • ローン完済後も固定資産税・都市計画税がかかる

まず高齢になると住宅ローン審査が厳しくなり、ローンを組みにくくなります。これは、金融機関が完済時年齢の上限を設定しているため、年齢が上がるほど借入期間が短くなり、毎月の返済負担が大きくなるためです。

また、建物の老朽化に伴い、外壁や屋根、水回りなどのメンテナンス費用が定期的に発生します。こうしたリフォームはまとまった支出となることも多く、老後のタイミングで負担が重なる可能性もあるでしょう。

加えて、固定資産税や都市計画税といった税負担が継続的に発生する点も理解しておく必要があります。

賃貸を選択するメリット・デメリット

続いては賃貸を選択した場合のメリット・デメリットを紹介します。

賃貸のメリット

まずは賃貸を選択する場合のメリットから見ていきましょう。

  • 住み替えがしやすい
  • 設備の交換や修理費用の負担がない
  • 固定資産税や都市計画税が不要

賃貸はライフスタイルの変化に応じて住み替えがしやすい点が特徴です。例えば、子どもの独立後に夫婦二人暮らしとなった場合、コンパクトで家賃を抑えた住まいへ移ることも可能です。

また、設備の故障や建物の不具合が発生した場合でも、基本的にはオーナー側が修理費用を負担します。そのため、突発的な支出が発生しにくく、家計管理がしやすい点もメリットの一つです。

加えて、賃貸では固定資産税や都市計画税といった税負担がありません。持ち家のように継続的な税負担が発生しない点もメリットといえるでしょう。

賃貸のデメリット

一方で、賃貸では以下のようなデメリットがあります。

  • 老後も家賃負担が続く
  • 許可なくリフォームすることができない
  • 高齢者は契約できない物件もある

まず、賃貸は住宅ローンのように支払いが終わることがなく、老後も家賃の負担が継続します。収入が年金中心となる場合でも一定の住居費が必要となるため、長期的な資金計画を立てておくことが重要です。

また、賃貸物件では基本的にオーナーの許可なくリフォームを行うことはできません。間取りの変更や設備の入れ替えなどに制限があるため、住まいを自由にカスタマイズしたい場合には不向きといえるでしょう。

さらに、高齢になると入居審査が厳しくなるケースがあります。収入面や保証人の問題などから契約できる物件が限られる可能性があるため、将来の住まいについて早めに考えておく必要があります。

【持ち家・賃貸】それぞれ向いている人の特徴

持ち家と賃貸にはそれぞれ異なる特徴があるため、どちらが適しているかは個人のライフスタイルや将来設計によって変わります。ここでは、持ち家と賃貸がどのような人に向いているのかを見ていきます。

持ち家が向いている人の特徴

持ち家が向いている人の特徴は、同じ場所で長く生活できる人です。転勤の可能性が低く、生活拠点を大きく変える予定がない場合、住宅ローンの完済まで住み続けやすくなります。

また、退職までに住宅ローンを完済できる見込みがある人も、持ち家に向いているといえます。現役時代に返済を終えることで、老後の住居費負担を抑えられるため、生活の見通しを立てやすくなるでしょう。

賃貸が向いている人の特徴

賃貸が向いている人の特徴として挙げられるのが、柔軟に住み替えに対応できる人です。ライフスタイルの変化に合わせて住まいを変えたい場合や、将来の生活がまだ定まっていない場合には賃貸のほうが適しているといえます。

例えば、何らかの要因で収入が下がった場合に、今より家賃の低い物件に住み替え、住居費を抑えるといった対応も可能です。

また、転勤が多い人も賃貸に向いているといえます。勤務地の変更に応じて住み替えがしやすく、売却や空き家管理といった負担が発生しないため、環境の変化にも柔軟に対応しやすくなるでしょう。

老後の住まいと資産設計は専門家に相談

持ち家か賃貸かを納得のいく形で選択するためには、老後生活に向けた資産形成についてもあわせて検討する必要があります。毎月の住居費を支払いながらも、資産運用に回す資金を確保し、安定した資産形成を進めていくことが重要です。

そのためには、不動産や資金計画、資産運用に詳しい専門家に相談することも選択肢の一つです。FP(ファイナンシャル・プランナー)は、生涯収支(キャッシュフロー)の試算、住宅ローン返済計画、老後資金とのバランス、教育費や介護費との兼ね合い、購入と賃貸の比較シミュレーション等の相談に対応します。

一方、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)ではライフプランや資金計画を踏まえた資産運用の提案や、金融商品についてのアドバイスを行います。なお、費用や提供サービスは各事業者によって異なりますが、IFAの中には、ライフプランニング(FP相談)と資産運用相談をワンストップで行う業者もありますので、一度IFAへの相談を検討してみてはいかがでしょうか。

※税務・法務・不動産の助言については、必要な資格を有する者または提携専門家が対応する場合があります。

まとめ

持ち家と賃貸のどちらが適しているかは一概に決められるものではなく、ライフスタイルや居住期間、費用の前提条件によって結果が変わります。今回のシミュレーションでも分かるように、同じ条件でも設定次第では有利不利が逆転する可能性もあります。

持ち家に向いている人は、同じ場所で長く生活できる人や、退職までに住宅ローンを完済できる見込みの人です。一方で、賃貸に向いている人は、ライフスタイルの変化に応じて柔軟に住み替えたい人や、転勤が多い人といえます。

このように、それぞれの特徴を踏まえて自身の状況に合った選択をすることが重要です。それでも判断に迷う場合は、一度専門家に相談することも有効な選択肢となるでしょう。

執筆者

辻本 剛士

神戸・辻本FP合同会社 代表

主な所有資格はCFP認定者、FP1級技能士、宅地建物取引士。神戸で活動中の独立型FP。2007年に医療機器・医薬品販売会社に入社。30歳を機にFPの勉強を開始し、31歳でFP2級に独学で合格。そこから5年間にわたり、保険相談や年金、資産運用などお金の相談を無償で実施。その後、36歳で高度な専門性を求められるCFP、FP1級に合格。2020年に「神戸NEWSTYLE神戸FP相談」として開業。2023年から法人会社を設立し、金融商品の販売を目的としない独立型FPとして活動中。個人向けのFP相談はもちろん、企業様向けサービス、金融に特化した記事執筆と幅広く活躍中。

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