iDeCoの受け取りはいつから?一時金と年金の税金の違いと最適な方法を解説

2026年4月9日

  • 執筆
    新井 智美(トータルマネーコンサルタント)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金づくりの制度として広く知られていますが、「受け取り方」まで正しく理解できている人は少ないのではないでしょうか。

実はiDeCoは、いつから受け取るか、一時金にするか年金にするかによって、適用される税金の仕組みが大きく変わります

さらに2026年1月からは、退職金を2回以上受け取る場合の「退職所得控除」の扱いが変わり、iDeCoの一時金も影響を受ける点には注意が必要です。

本記事では、iDeCoの受け取り開始時期や受け取り方の基本から、税金の違い、そして老後の出口戦略として考えておきたいポイントについて、分かりやすく整理します。

iDeCoはいつから受け取れる?基本ルールを整理

iDeCoの出口戦略を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「いつから受け取れる制度なのか」という基本ルールです。

受け取り開始年齢には一定の条件があり、加入期間によっても扱いが異なります。ここでは、制度の全体像を整理します。

原則は60歳から。加入期間による違い

iDeCoの老齢給付金は、原則として60歳から受け取ることができます。ただし、誰でも無条件に60歳から受け取れるわけではありません。

受給開始には「通算加入期間10年以上」という要件があり、これを満たしていない場合は、受け取り開始年齢が後ろ倒しになります。

iDeCoの受給開始年齢と条件一覧

加入期間 受給開始可能年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1ヶ月以上2年未満 65歳

たとえば、転職や制度変更の影響で加入期間が短い場合、60歳時点では受給できず、61歳以降にずれ込むケースもあります。

誰もが必ずしも60歳から受け取れるわけではありません。

そのため、iDeCoは「60歳から受け取れる制度」と理解しつつも、自身の加入期間を確認することが重要と言えるでしょう。

受け取り開始は75歳まで繰り下げ可能

iDeCoの受け取り開始時期は、60歳から75歳までの間で選択できます。つまり、60歳ですぐに受け取らず、一定期間は運用を継続し、後から受け取ることも可能です。

ただし、繰り下げれば必ず有利になるとは限りません。運用環境や、他の年金・収入とのバランスによっては、早めに受け取るほうが結果的に安定するケースも考えられます。

「いつから受け取るか」は、税金だけでなく、老後の生活設計全体を踏まえて考える視点が大切です。

iDeCoの受け取り方は3種類|一時金・年金・併用

iDeCoの受け取り方は一つではありません。制度上は、大きく分けて3つの選択肢が用意されており、それぞれ税金の扱いが異なります。ここでは、受け取り方と税金の関係について整理します。

一時金で受け取る場合の特徴

iDeCoを一時金として一括で受け取る場合、税法上は「退職所得」として扱われます。退職所得には、退職所得控除や2分の1課税といった優遇措置があり、税負担が軽くなりやすい点が特徴です。

一方で、会社の退職金と同じ所得区分になるため、受け取るタイミングや順番によっては、控除額に影響が出る場合があります。この点は、後ほど詳しく解説します。

年金形式で受け取る場合の特徴

iDeCoを年金形式で受け取る場合は、「雑所得(公的年金等)」として課税されます。公的年金等控除が適用されるため、一定額までは税負担が抑えられますが、他の年金収入と合算される点が特徴です。

老後の収入が年金中心になる方にとっては、収入を平準化できるというメリットがある一方、所得全体の状況次第では税負担が増える可能性もあります。

一時金と年金形式の併用で受け取る場合の特徴

iDeCoでは、一時金と年金を組み合わせて受け取ることもできます。たとえば、まとまった資金は一時金で受け取り、残りを年金として分割受給する、といった設計も可能です。

この方法は柔軟性が高い反面、税金の計算が複雑になりやすいため、税金の計算のしくみをしっかりと理解したうえで利用しましょう。

iDeCo受け取り時の税金の仕組み

iDeCoの受け取り方を考える際、多くの方が悩むのが「税金の違い」です。

受取方法による税金の違い

受取方法 所得区分 適用される控除 税負担の特徴
一時金 退職所得 退職所得控除 控除が大きく、税負担が軽くなりやすい
年金 雑所得 公的年金等控除 ・毎年課税される
・公的年金と合算して計算される
一時金と年金の併用 ・一時金:退職所得
・年金:雑所得
・一時金:退職所得控除
・年金:公的年金等控除
受け取り方次第で有利にも不利にもなる

一時金と年金では、そもそも所得区分そのものが異なるため、仕組みを整理して理解することが大切です。

一時金は「退職所得」扱い

一時金で受け取ったiDeCoは、退職所得として扱われます。
退職所得には、以下のような特徴があります。

  • 退職所得控除が適用される
  • 課税対象額が2分の1になる
  • 他の所得と分離して計算される

退職所得控除額の計算方法

iDeCoの加入年数(A) 退職所得控除額
20年超 800万円+70万円×(A-20年)
20年以下 40万円×A

例えば、退職時に2,500万円の退職金(勤続年数:38年)を受け取ったとしましょう。

その際の退職所得控除額は、800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円ですので、控除後の退職金額は2,500万円-2,060万円=440万円です。

この440万円×1/2の220万円が課税される退職所得金額です。

これらの仕組みにより、同じ金額を受け取った場合でも、給与や年金より税負担が軽くなる傾向があります。

そのため、一時金は「税制上、有利になりやすい受け取り方の一つ」と言えるでしょう。

年金形式は「雑所得」扱い

年金形式で受け取るiDeCoは、雑所得(公的年金等)に分類され公的年金等控除が適用されます。

公的年金等に係る雑所得以外の合計金額が1,000万円以下で65歳未満

公的年金等の収入金額の合計額 公的年金等に係る雑所得の金額
60万円以下 0円
60万円超130万円未満 収入金額の合計額-60万円
130万円超410万円未満 (収入金額の合計額×0.75)-27万5,000円
410万円超770万円未満 (収入金額の合計額×0.85)-68万5,000円
770万円超1,000万円未満 (収入金額の合計額×0.95)-145万5,000円
1,000万円以上 収入金額の合計額-195万5,000円

公的年金等に係る雑所得以外の合計金額が1,000万円以下で65歳以上

公的年金等の収入金額の合計額 公的年金等に係る雑所得の金額
110万円以下 0円
110万円超330万円未満 収入金額の合計額-110万円
330万円超410万円未満 (収入金額の合計額×0.75)-27万5,000円
410万円超770万円未満 (収入金額の合計額×0.85)-68万5,000円
770万円超1,000万円未満 (収入金額の合計額×0.95)-145万5,000円
1,000万円以上 収入金額の合計額-195万5,000円

公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以上の場合は、最終的な雑所得金額が異なります。詳しくは国税庁のホームページで確認してください。

国税庁|公的年金等の課税関係

公的年金等に係る雑所得は国民年金や厚生年金と合算して計算されます。そのため、公的年金等に係る雑所得金額が多いと、税負担が大きくなり、住民税や社会保険料にも影響します。

要注意!退職金とiDeCo一時金の「受取間隔ルール」

iDeCoの受け取り方を考える際、見落とされやすいのが退職所得控除の調整ルールです。特に、一時金として受け取る場合は、会社の退職金との所得控除の関係を整理しておかないと、想定外の税負担が生じる可能性があります。

2026年1月からは制度が変更され、退職金やiDeCo一時金を複数回受け取るケースでは、これまで以上に「受取間隔」が重視されるようになりました。ここでは受取間隔のルールの概要について解説します。

退職所得控除は「まとめ取り」防止の仕組み

退職所得控除は、長年の勤労に対する配慮として設けられた税制上の優遇措置ですが、短期間に複数の退職金を受け取る場合、後から受け取る分の控除が制限される仕組みがあります。

その理由は過度に控除の恩恵を受けるためです。

iDeCoを一時金として受け取る場合、その給付は退職所得として扱われます。つまり、会社の退職金とは別の制度であっても、税制上は同じ「退職所得」として管理されることになります。

その結果、

  • 退職金
  • iDeCoの一時金

を短い間隔で受け取る場合、退職所得控除を満額使えない可能性が出てくるのです。

iDeCoは受け取り時期を自分で選べる制度である以上、受け取り時期によって影響を受けやすい点には注意しておきましょう。

2026年1月からの「10年ルール」とは

iDeCoの一時金を含め、2ヶ所以上から退職金を受け取る場合、受け取る間隔が10年未満だと、後から受け取る退職金の退職所得控除が減額されます。改正前は5年未満でした。

このことをより分かりやすくするため、シミュレーションを用いて解説します。

【条件】

  • 60歳でiDeCo一時金1,000万円を受け取る(iDeCo加入期間:20年)
  • 65歳で退職金2,000万円を受け取る(勤続年数:43年)

1.iDeCo受取時
退職所得控除:800万円 + 70万円×(20 − 20)= 800万円
退職所得金額:(1,000万円-800万円)×1/2=100万円

2.退職金受取時
10年ルールが適用されるため、退職所得控除の計算からiDeCoの加入期間が控除されます。
10年ルールでは、次のように計算します。

勤続年数は43年なので、単純に退職所得控除および退職所得金額を計算すると、
退職所得控除:800万円+70万円×(43年−20年)=2,410万円
退職所得金額:2,000万円-2,410万円=0円
となり、課税されません。

しかし、重複期間(iDeCo加入期間(20年))が調整されるため、40万円×20年=800万円が退職所得控除から差し引かれ、
退職所得控除:2,410万円−800万円=1,610万円
退職所得金額:(2,000万円−1,610万円)×1/2=195万円
になってしまうのです。

ちなみに退職金を70歳で受け取った場合、iDeCoの加入期間(重複期間)は調整されないため、上の2のとおりの計算式になり課税されません。

ここで押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  • iDeCoと退職金の両方で退職所得控除を使う場合、 期間が重複している分の控除額が差し引かれる
  • 2026年1月からは「10年未満の間隔」で受け取ると、控除額の調整が入るため、税負担が発生しやすくなる仕組みになっている

つまり、iDeCoの一時金を先に受け取り、その後10年以内に退職金を受け取る場合、iDeCoの加入期間と、退職金の勤続年数の重複部分が調整されて差し引かれることをしっかりと理解しておきましょう。

例外的に適用される「20年ルール」

「退職金→iDeCoの一時金」の順で受け取る場合は、上の10年ルールではなく20年ルールが適用されます。これは今までもあった制度で、変わっていません。

上と同じ条件で、60歳の時に退職金2,000万円を受け取ったとしましょう。その際の退職所得控除額は、

800万円+70万円×(38年−20年)=2,060万円、退職所得金額は0円です。

その後、65歳でiDeCoの一時金を受け取った場合、退職金とiDeCo一時金の受給間隔が5年のため、退職所得控除は合算管理されます。

退職所得控除の総枠:2,410万円
すでに退職金で使用した額:2,000万円


iDeCoで使える退職所得控除:2,410万円−2,000万円=410万円
iDeCoの退職所得金額:(1,000万円−410万円)×1/2=295万円

つまり295万円が課税対象になります。

自分に合ったiDeCoの受け取り方を考える

ここまで見てきたように、iDeCoの受け取り方にはそれぞれ特徴があり、一概に「この方法が最適」と言い切れるものではありません。

一時金での受け取りは税制上の優遇を受けやすい一方で、退職金との関係を慎重に考える必要がありますし、年金での受け取りは収入を平準化できる反面、他の年金収入との合算金額を考慮する必要があります。

つまり、iDeCoの出口戦略を考える際は、制度単体ではなく、自分の老後全体の資金の流れを元に受け取り方や受け取るタイミングを考えることが重要と言えるでしょう。

会社の退職金制度があるか

会社に退職金制度がある場合、iDeCoの受け取り方を考えるうえで、特に注意が必要です。

上で解説した通り、iDeCoの一時金は退職所得として扱われるため、会社の退職金を受け取る際に、退職所得控除の計算に影響を及ぼす可能性があります。

  • 退職金を受け取る時期
  • 退職金の見込み額
  • iDeCoを一時金で受け取るかどうか

といった要素が重なる場合には、退職所得控除の使い方に注意が必要です。

一方で、退職金制度がない、または金額が比較的少ない場合は、iDeCoの一時金の税制優遇を生かしやすいケースも考えられます。

このように、退職金制度の有無や内容によって、検討すべき視点が大きく変わる点は、押さえておきたいポイントです。

老後の収入バランスと税率

老後の収入は、公的年金だけとは限りません。
厚生年金や国民年金に加えて、企業年金、iDeCoの年金受給、さらには不動産収入や配当収入など、複数の収入源を持つ人もいます。

このとき重要になるのが、「どの年に、どの種類の収入が入るのか」という視点です。
年金形式でiDeCoを受け取る場合、他の公的年金と合算されるため、受給額によっては税率が上がる可能性もあります。

一方、一時金で受け取ることで、年金受給期間中の所得金額を抑え、結果として税負担を平準化できると考えられるケースもあります。

老後の税金は、単年だけで判断するのではなく、複数年を通した収入の流れとして捉えることが大切だと言えるでしょう。

一時金で使う予定があるか

iDeCoを一時金で受け取るかどうかを考える際、「そのお金をいつ、何に使う予定があるのか」を整理することも大切です。

たとえば、

  • 住宅ローンの完済
  • 自宅のリフォーム費用
  • 将来の介護費用や医療費

といった、まとまった支出が見込まれる場合には、一時金として受け取るほうが現実的でしょう。一方で、すぐに使う予定がない資金については、年金形式で分割して受け取り、生活費の補完として活用する考え方もあります。

「使う予定のあるお金」と「長く活用するお金」を分けて考えることで、受け取り方の選択が整理しやすくなります。

iDeCoの出口戦略は「制度理解と設計」が重要

iDeCoは、受け取り方によって税金や手取り額が変わる制度です。一時金と年金にはそれぞれ特徴があり、さらに2026年1月以降は、退職所得控除の10年ルールの影響も考慮する必要があります。

重要なのは、「どれが正解か」を決めつけることではなく、自身の退職金制度や老後の収入の見通しを踏まえて、全体を設計する視点を持つことです。

iDeCoの出口戦略は複雑になりがちなため、制度を理解したうえで全体像を整理することで、不要な税負担を避けられる可能性もあります。

制度を正しく理解し、受け取り方法について考える際には、具体的な状況に合わせた専門家への相談を検討すると安心です。

執筆者

新井 智美

トータルマネーコンサルタント

(保有資格)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員。マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間200本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,500本を超える。

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