【40代からの老後資金計画】30代との違いは?失敗のリスクを抑えるための準備と戦略

  • 執筆
    小山 英斗(未来が見えるね研究所 代表/CFP®認定者)

「老後資金」という言葉に現実味を帯びた不安を感じ始めるのが40代です。30代では「まだ先の話」と思えていた老後も、40代になると残された時間や収入のピーク、家族構成が見え始め、資産形成の考え方そのものを見直す必要が出てきます。

30代と同じ考え方のままでは、老後資金が不足するリスクが高まる可能性があります。本記事では、40代と30代の老後資金計画の違いを整理しながら、40代が意識しておきたい「失敗のリスクを抑えるための視点や戦略」を解説します。

なぜ40代は老後資金計画の「分岐点」なのか

30代の頃は、老後について単に「積み立てていれば大丈夫」と考えていた人も、40代に入ると次のような疑問を感じることがあるかもしれません。

  • このままで本当に老後資金は足りるのか
  • 教育費や住宅ローンを抱えながら、どう備えればいいのか
  • 何から見直せばよいのか分からない

40代は、老後資金計画における大きな分岐点といえる時期です。40代になると老後までの残り時間が限られてくる一方で、支出は増えやすい傾向となります。30代と同じ感覚のままでは、思うように資産形成が進まず、老後資金が不足するリスクが高まることも考えられます。

数字で見る40代の現実

まずは、40代を取り巻く客観的な数字を確認してみましょう。総務省「家計調査年報2024年」によると、40代・2人以上世帯の平均消費支出は、月約33万円となっています。

また、金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2024年(2人以上世帯調査)」では、金融資産を保有している同世代の平均貯蓄額(中央値)は約520万円とされています。一方で、住宅ローンを抱える世帯のローン残高の中央値は約1400万円となっています。

さらに、子どもがいる世帯では、40代は高校や大学への進学時期と重なるケースも少なくありません。日本政策金融公庫の令和3年度「教育費負担の実態調査」によると、高校入学から大学卒業までにかける子ども1人当たりの教育費(入学・在学費用)は約942万円とされています。

このように、「老後のためにお金を回したい」と思っても、40代は次のような支出が重なりやすい時期です。

  • 住宅ローン返済の本格化
  • 教育費がピークに向かう
  • 親の介護リスクの現実化
  • 自身の健康や働き方への不安

このため、30代と同じ発想で「老後資金を貯めよう」とすると、無理な節約や過度なリスクを取った資産運用に偏り、老後資金計画が続かなくなる可能性もあります。

つまり40代は、支出が最も大きい時期でありながら、老後までの時間は限られているという、非常に難しい立場にあるといえるでしょう。

実際に、総務省の家計調査では40代の約86%が老後の生活について「心配している」と回答しています。その理由として最も多いのが「十分な金融資産がないから」で、次いで「年金や保険が十分ではないから」となっています。

30代は「積立習慣」、40代は「設計図」が重要

30代は多少の遠回りや失敗があっても、時間がリカバリーしてくれるという強みがあります。そのため、30代の老後資金計画は、とにかく「早く始めて長く続ける」といった「積立習慣」を身につけることが最大の戦略になり得ました。

一方、40代での老後までの残り時間は20〜25年程度です。「なんとなく積み立てている」だけでは、目標に届かない可能性も出てきます。40代の老後資金計画に必要な戦略は、これからの人生をどう過ごすかを整理した「設計図」を描くことが大切だといえるでしょう。

40代と30代の老後資金計画の決定的な違い

40代が老後資金計画を立てる際に、30代と異なるポイントを3つの視点から整理します。

ゴール金額を「現実ベース」で設定する

30代では「将来のために増やす」という考え方が中心でしたが、40代では以下のような点を具体的に整理し、数字として「見える化」をすることが重要となります。

  • 老後はいくらで生活したいのか
  • 年金はいくら受け取れそうか
  • 不足額はいくらか
  • 何歳までに準備するのか

ゴールとなる金額を「現実ベース」で見える化しないままでは、老後資金計画がぶれてしまう可能性があります。

投資リスクの取り方が根本的に変わる

老後まで「時間」が味方してくれる30代の老後資金形成は、「リスクを取ってでも増やす」が成立しました。しかし、40代では、次のような観点からリスク管理の重要性が高まります。

  • 大きな下落から回復する時間が限られる
  • 家計への影響が直接的になりやすい
  • 資産減少による精神的負担が大きくなりやすい

40代の老後資金の貯め方は、「増やす」だけでなく「資産を減らさない」視点も欠かせません。「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があるように、特定の金融商品などに集中せず、値動きの異なる複数の資産(株式・債券・不動産・ゴールドなど)や地域(国内・海外)などへの資産分散を心掛けることが大切になってきます。

老後資金は「ライフプランニング」の一環として計画する

30代では老後資金はあくまで「将来の一要素」でしたが、40代では、支出が増加する教育費や住宅費、親の介護といった複数の資金課題が重なります。

そのため、40代の老後資金計画は、老後資金だけを切り離して考えるのではなく、住宅資金や教育資金などを含め、人生全体のお金の優先順位を整理する「ライフプランニング」の一環として考える視点が重要となります。

ライフプランニングは、将来の夢や目標を具体化し、それを実現するためのお金の計画を立てるプロセスです。一般的には次の4つのステップで進めていきます。

1.時系列に将来の予定(夢や目標)を「ライフイベント表」に書き出す
2.家計の現状を把握し、年間の収支が分かる「収支表」や資産負債の状況を整理した「バランスシート」を作成する
3.ステップ1の目標とステップ2で整理した現状から、将来の収支と貯蓄残高を予測するキャッシュフロー表を作成する。
4.キャッシュフロー表で赤字になる時期があれば、必要な対策を立てて実行や改善を行う。

ライフプランニングで作成する表などは、日本FP協会のホームページで「便利ツール」として提供されているものなどが参考になるでしょう。ライフプランニングは一度実施して終わりではなく、環境の変化に応じて定期的に見直すことがポイントです。

40代が陥りやすい老後資金づくりの失敗パターン

思い込みや先送りといった行動、退職金への過度な期待によって、老後資金計画がうまく進まないケースも見られます。

税制優遇制度を使っているから大丈夫」という思い込み

つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を使っている40代は増えています。しかし、次の点を確認しないまま、「税制優遇制度を使っているから大丈夫」と安心してしまう人も少なくないようです。

  • 積立額は老後資金として十分か
  • 他の資産とのバランスは取れているか
  • 老後の取り崩しの方法まで想定できているか

税制優遇制度を使っていること自体が、老後資金計画の完成を意味するわけではないことに注意が必要です。

「今は忙しいから後で考える」という先送り

40代は仕事や家庭で忙しく、老後資金計画を後回しにしがちな世代です。しかし、40代で先送りした5年は、30代の5年とは重みがまったく違います。

老後資金において、40代の先送りは「取り返しがつかない選択」になりかねません。時間そのものが最大のリスク要因になるのが40代です。老後までの時間が限られ始める40代だからこそ、老後資金計画は、できる範囲から取り組み始めることが大切だといえるでしょう。

「退職金頼み」という考え方

「退職金が1,500万円くらい出るはずだから、それでなんとかなる」といった安易な見積もりは注意が必要です。退職金制度の見直しや課税強化の議論もあり、想定どおり受け取れない可能性もあります。

また、住宅ローンの残債を退職金で一括返済する予定の人は、手元資金が不足し、予期せぬ大きな出費により老後の生活が立ちいかなくなるリスクも考えられます。

40代からの老後資金計画で大切な視点

40代で老後資金計画を考える上で大切な2つの視点があります。

老後資金は「貯め方」より「使い方」から考える

老後資金の話になると、多くの人は「老後に2,000万円必要」という数字に振り回され、「いくら貯めるか」ばかりに目が行きます。しかし重要なのは、「何歳から、どうお金を使って、どんな生活を送りたいか」という視点です。この視点がないままでは、どんなに積み立てても不安は消えません。

40代の老後資金計画は、「貯め方」よりも「使い方」から逆算する考え方も有効といえるでしょう。

働き方と老後資金は切り離せない

40代では、「何歳まで、どんな働き方をするか」を考えることも老後資金計画の重要な要素です。働き方にも次のようないろいろな考え方があります。

  • 定年までフルタイムで働く
  • 60代以降は緩やかに働く
  • 早期リタイアを目指す

働き方によって、必要な老後資金は数百万円〜数千万円単位で変わります。リスクの取り方も違ってきます。

また、将来の働き方を見据えたキャリアプランなどを考えて、40代のうちから必要な行動を取り始めることも、老後を考える上では大切になってきます。今の会社に固執するのではなく、副業や資格取得、人脈づくりなど、「長く、無理なく働ける環境」を作るための自己投資も老後資金計画の一部と考えることができます。

老後資金計画では専門家への相談も有効な手段の一つ

40代の老後資金計画は正解が一つではありません。家族構成、収入水準、資産状況、価値観などによって、最適解は人それぞれです。情報収集だけでは、自分に合った老後資金計画を描くことは難しいかもしれません。

そのような場合、ファイナンシャルプランナーなどの第三者の専門家の視点を取り入れ全体を俯瞰することも、最適な計画を立てるための有効な手段の一つとなります。

専門家は次のような観点から家計や資産全体を整理し計画の手助けを行います。

  • 老後資金の全体像を整理する
  • 優先順位を明確にする
  • 無理のない戦略を設計する
  • 目的を明確にした資産運用戦略

第三者の視点を取り入れることで、思い込みや見落としに気づける点も、相談のメリットといえるでしょう。

また、資産運用していて市場が暴落したときや、あるいは急な出費が重なったときなどは、焦りから誤った判断をしがちです。客観的な視点を持つ専門家が伴走することで、一時的な変化に動じることなく、長期的なゴールに向かって計画を修正(リバランス)し続けることもできます。

まとめ:40代の老後資金計画は「人生後半の設計図」を描くこと

40代からの老後資金計画は、単なる貯蓄や投資の話ではありません。どんな老後を送りたいのか、どんな働き方をしたいのか、家族とどう生きていくのか、それらの答えを形にするための「人生後半の設計図」を描くことです。

30代と同じ感覚のままでは、40代の老後資金づくりが思うように進まないこともあります。「まだ間に合う40代」だからこそ、一度立ち止まり、必要であれば専門家と一緒に全体像を整理することが、将来の安心につながるといえるでしょう。

出典)
総務省「家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)」
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2024年」
日本政策金融公庫令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
日本FP協会「便利ツールで家計をチェック」

執筆者

小山 英斗

未来が見えるね研究所 代表/CFP®認定者

2018年よりFPとして独立。住宅購入・金融資産運用・ライフプラン相談に強みを持ち、年間200件超の個別相談依頼やお金に関する執筆・セミナー講演実績あり。銀行や保険などの金融機関やハウスメーカーに属さない独立した立場からのサービスを提供しています。<保有資格>CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)住宅ローンアドバイザー(一般社団法人 住宅金融普及協会認定会員)住宅建築コーディネーター(一般社団法人 住宅建築コーディネーター協会認定会員)日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー

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